2017年8 月13-17日、東京市ケ谷のJICA地球ひろばにて、NGOスタッフやJICA職員などを対象に安全対策研修(Security Risk Management)および安全管理トレーナー養成研修(Training of Trainers)を開催しました。特に、トレーナー養成研修は安全管理の分野では初の取り組みとなりました。両研修とも、UNHCR Regional Centre for Emergency Preparedness(eCentre)および外務省の協力を得て実施しました。
安全管理研修は27名の参加があり、首都圏はもとより、名古屋や広島など地方に拠点をおく団体や、海外に駐在されている職員、本部の管理職職員など、日々の業務の中で安全管理の必要性を有しているさまざまな立場の方が参加されました。3日目には事例や実際の経験をもとに作成された模擬訓練を通じ、安全管理に関する理論やスキルなど学んだことがどれだけ身についたかを試す機会もありました。一方、トレーナー養成研修は16名の参加がありました。参加者は、海外における人道支援分野で3年以上の実務経験を有し、その多くが複合緊急事態(complex emergencies)での駐在あるいは出張の経験がある方々でした。前半の安全管理研修で学んだ内容を、今度は教える立場として必要な成人教育などの知識や、プレゼンテーションなどのスキルを習得しました。研修参加者のうち、7団体13名がJaNISSメンバー団体から(JaNISSコーディネーター1名含む)、他の10団体14名はJaNISSメンバー団体以外のNGO、さらにJICA、日本赤十字社からの参加者ということで、講師を含め、JaNISS内外での交流やネットワーキングが活発に行われました。参加者からは、安全管理研修に関する基礎的な知識やスキルを体系だてて学ぶことができた、今回学んだ内容をベースに団体内の安全管理規程などを作成・改訂していきたいなどの声が聞かれました。また、研修参加者は得た知識やスキルを自団体の活動に活かすだけではなく、今回の研修で養成されたトレーナーによる国内での日本語をベースとした今後の研修実施を通じて、日本の国際協力支援団体の安全管理の知識・スキルの習得といった全体的なボトムアップに貢献することが期待されます。
[日時]
(1) 安全管理研修:
2017年8月13日(日)9:00-17:00
8月14日(月)9:00-17:30
8月15日(火)9:00-14:00
(2)トレーナー養成研修:
8月15日(水)14:00-17:45
8月16日(木)9:00 -17:30
8月17日(金)9:00 -18:00
[場所] JICA地球ひろば(市ヶ谷)
[主催] UNHCR eCentre
[実施] UNHCR eCentre、NGO安全管理イニシアティブ(JaNISS)
[協力] 外務省
[講師] Lynne Bethke氏(Inter Works)、Boguslaw Romantowski氏(UNHCR)、Peter Kozelets氏(UNHCR)
[使用言語] 英語
[参加者数] (1)安全管理研修:27名、(2)トレーナー養成研修: 16名
[内容]
(1)安全管理研修:
人道援助を取り巻く安全環境の理解、管理者の責任と安全管理に対する説明責任の理解、脅威・脆弱性とリスクを評価する手法、安全管理計画と計画の立案、危機的事態の管理、安全性向上のためのパートナーシップ、情報管理と報告・メディア対応など
(2)トレーナー養成研修:
成人教育の手法、プレゼン方法、経験学習の手法など
(1)安全管理研修
時間 | 項目 | メインテーマおよび学習ポイント |
1日目/8月13日(日) | ||
0900-0915 | 参加者受付 | · 参加者到着 |
0900-1000 | 1.1:イントロダクション | · 開会の言葉
· 講師および参加者自己紹介 · 研修にあたっての留意事項 |
1000 | 休憩 | |
1015-1200
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1.2:脅威に関する評価 | · 脅威とは何か?
· 情報源、情報の分析方法、信用性の高い評価方法 · 事例に基づく脅威の特定 |
1200-1300 | 昼食 | |
1300-1415
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1.3:脆弱性に関する評価 | · 人道支援および開発支援団体における脆弱性の要素についての話合い
· 事例に基づく脆弱性の特定 |
1415 | 休憩 | |
1430-1630
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1.4:リスク・マトリックスを用いたリスクの特定 | · リスク・マトリックスを用いて脅威が起こる可能性(偶然性)およびインパクトについて特定
· リスク・マトリックスをつくるうえでの実践的、実際の体験の共有 · ツールを用いて実践の難しさの理解およびそれらを克服するためのアプローチ |
2日目/8月14日(月) | ||
0900-1030
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2.1:リスクの管理 | · 安全ツールキット:人道支援および開発支援団体のために用いられるリスク緩和の指標
· 日本版安全管理に関するミニマム・スタンダード(MOSS) |
1030 | 休憩 | |
1045-1200 | 2.2:安全リスク管理の実践- 緩和 | · 緩和の指標を選択し、実際に応用する |
1200-1300 | 昼食 | |
1300-1430
|
2.3:安全対策および計画策定における安全リスク管理アプローチ | · 安全対策のベストプラクティス:全ての良き計画に共通した要素、計画を維持しアップデートするための実践的な助言
· 安全に関する事業継続計画づくり:標準的な事業実施手続き(SOPs)を確立するためのプロセス、または、危機的なシナリオにおける詳細な計画づくり |
1430 | 休憩 | |
1445-1545 | 2.4:安全リスク管理の実践-安全対策の策定 | · 参加者の団体での体験についての話合いを通じた、安全に関する事業継続計画を展開するにあたっての実践的な応用 |
1600-1700 | 2.5:安全リスク管理の実践-情報、危機的状況、メディア対応 | · 支援団体の管理職が危機的な出来事に対応するためのツールやシステム
· 即時的な対応:最初の行動 · メディアの取扱い |
1700-1730 | 危機的な出来事への対応に関する演習の準備 | · エクササイズに関する説明
· チームに分かれての演習にあたっての準備 |
3日目/8月15日(火) | ||
0845-1100
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3.1:安全リスク管理の実践-危機的な出来事への対応に関する演習 | · 危機的出来事に関する実践的シミュレーション
· 情報およびメディア対応スキルに関する演習
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1100 | 休憩 | |
1115-1215
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3.2:危機的な出来事への対応に関する演習の解説 | · 重要なポイント、演習から学んだことについて話合う
· 危機的な出来事の最中と後における安全へのストレスとインパクトについて · 対応できなかった項目について話合う |
1215-1300
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3.3:今後の計画、評価など | · 各自での安全管理に関するアクションプラン作成
(団体の安全管理の改善計画含む)) · 本研修の評価 · 安全管理研修のみ参加者への修了証授与 |
1300-1400 | 昼食 |
(2)トレーナー養成研修
トレーナー養成研修部分/8月15日(火) | ||
1400-1500
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1.1:成人教育の紹介 | · 大人の学びの基本的な方法
· 学びの領域 · 学びの偏向とバイアス |
1500 | 休憩 | |
1515-1630 | 1.2短いプレゼンテーション
をつくる |
· 簡潔かつ記憶に残るプレゼン作成のためのガイドライン
· プレゼンテーション · 優先順位 · タイミング · 興味・関心(ストーリーテリング) · 信念 · 短いプレゼンテーションの準備 |
1630-1730 | 1.3参加者によるプレゼンテーション | · 参加者によるプレゼンテーション(参加者の半分) |
1730-1745 | 各種案内 | · 最終日に行う安全管理に関する実際のプレゼンテーションについて考え始める |
4日目/8月16日(水) | ||
0900-0930 | プレゼン準備 | |
0930-1030 | プレゼンテーション(昨日の続き) | · 参加者によるプレゼンテーション(残り半分) |
1030 | 休憩 | |
1045-1145 | 2.1:講義をするのではなく他の人に学んでもらうための経験的アプローチ | · 経験的アプローチ
· デザインの基本に関する短い演習 · ファシリテーションを通じた対話 · ファシリテーションの実践と指導 |
1145-1400 | プレゼンテーション | · 昼食
· プレゼン準備 |
1400-1500 | プレゼン1 | · 参加者は2つのグループに分かれる(別室)
· 1人45分でプレゼンテーションを行う |
1515-1615 | プレゼン2 | |
1630-1730 | プレゼン3 | |
5日目/8月17日(木) | ||
0900-1000 | プレゼン4 | · 参加者によるプレゼンテーション(昨日の続き) |
1015-1115 | プレゼン5 | |
1130-1230 | プレゼン6 | |
1230-1330 | 昼食 | |
1330-1430 | プレゼン7 | · 参加者によるプレゼンテーション(昨日の続き) |
1445-1545 | プレゼン8 | |
1600-1700 | プレゼン9 | |
1700-1800 | 今後の計画、評価、修了証の授与など |