NGO安全管理イニシアティブ(JaNISS)が設立から10年という節目を迎えました。これまで活動を共に築いてくださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。
10年前、日本の国際協力NGOを取り巻く状況、特に安全管理における状況は厳しさを増していました。人道危機の長期化、大規模化など、海外の支援現場で活動するNGOが直面しうるリスクもますます複雑化していました。そのような中で「各NGO個別の対応ではなく、日本のNGO全体として安全管理能力の向上とアドボカシーに取り組む必要がある」という課題意識のもと、JaNISSは誕生しました。
この10年間、JaNISSは多くの関係者の熱意と多大なる協力のもと、安全管理に関する実践知を共有する場として発展してきました。安全管理の共通基準・チェックリストの策定と、その確認制度の設計・NGOへの普及を行ったほか、研修を通した安全管理に関する情報提供および人材の能力強化も継続的に実施しています。また、日本のNGOが安全管理において“プロフェッショナル”であるという理解と支援を喚起するため、日本政府、メディア、世論に対するアドボカシーと啓発にも継続的に取り組みました。これらの活動を通して、「日本の国際協力NGOにおいて刻先純の安全管理が当たり前に行われるためのイニシアティブとなること。」というJaNISSのミッションをまさに具現化してきたと思います。
また、10年の間には世界的なパンデミックという未曾有の事態も経験しました。新型コロナウイルス感染症の拡大は、人の移動や現地での活動を制限する一方で、組織としての安全管理能力や事業継続体制のあり方を改めて問いかける出来事となりました。こうした状況の中でも、JaNISSのネットワークを通じて情報や経験を共有し合えたことは、多くの団体にとって大きな支えになったと感じています。
振り返れば、この10年で“安全管理”に対する私たちの認識も変化してきたのではないでしょうか。「事故を防ぐための対策」と捉えられがちであった安全管理ですが、今では組織の持続性やミッション達成を支える重要なテーマとして認識されるようになっています。安全管理は活動を制約するものではなく、私たちの活動を可能にする礎であるという理解が広がってきたことは、この10年間の大きな成果の一つと言えるでしょう。
現在、国際協力NGOが直面するリスクはさらに多様化しています。従来の現場における安全管理に加え、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止、サイバーセキュリティ、気候変動に伴う災害リスクなど、安全管理の対象領域は更に広がっています。同時に、支援を必要とする人々へのアクセスを確保しながら、スタッフや関係者の安全と尊厳を守ることが、これまで以上に求められています。
次の10年に向けて、JaNISSは引き続き関係者が率直につながり、学び合える場でありたいと考えています。多様なステークホルダーとの連携を深め、日本のNGOの安全管理文化の醸成に更に貢献していく所存です。
最後に、これまでJaNISSの活動を支えてくださったメンバー団体、協力団体、コーポレートパートナー、関係者の皆さまに改めて御礼申し上げます。この10年は、皆様の知恵と経験、そして「NGOとして活動地のリスクに応じて適切な対策を講じ、ミッションと支援目的を達成したい」という共通の思いによって築かれた10年でした。
これからの10年も、皆さまと共に歩みながら、日本のNGOの安全管理の実践と発展に貢献してまいります。
2026年8月1日
NGO安全管理イニシアティブ(JaNISS)
福原 真澄(世話人代表、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)
玉利 清隆(世話人、シャンティ国際ボランティア会)
道山 恵美(世話人、プラン・インターナショナル・ジャパン)
穂積 武寛(世話人、難民を助ける会)
山本 理夏(世話人、ピースウィンズ・ジャパン)
折居 徳正(コーディネーター、パスウェイズ・ジャパン)
