設立の経緯

日本のNGOは、従来各団体がそれぞれ事業実施に必要な安全管理能力を高め、各地でその活動を展開してきました。しかし、2000年代以降、人道及び開発支援関係者が直面する危険は著しく高まり、アフガニスタン、南スーダン、中東等それぞれの地域で活動する団体が、有志で集まって対策を検討し、外務省とも協議を行う等してきました。そして、2015年2月のシリアでの邦人人質殺害事件を受けて、日本のNGO全体として安全管理能力の向上とアドボカシーに取り組む必要があるのではないかとの認識が生まれ、2015年9月より有志団体が集まって、勉強会を重ねました。そして2016年6月に、米国のNGOネットワークであるInterAction等から講師を招き、ワークショップを開催しました。

 

InterActionからの学び

2016年6月に、ジャパン・プラットフォームと米国のNGOであるMercy Corpsの共催にて、TOMODACHI NGO Leadership Programの一環として、InterAction等から講師を招いてのワークショップが開催され、アメリカのNGOの安全対策強化の経緯に学びながら、日本のNGOの課題とそれを解決するための行動計画について、集中して議論を行いました。


2016年6月6-9日開催ワークショップの概要

日程と参加者数:4日間で人道原則、人道支援の安全対策フレームワーク、InterActionの安全対策最低基準、リスク分析演習等を学び、日本における安全対策基準の可能性や研修充実について協議。参加者の総数143名。
http://www.japanplatform.org/contents/NGO-leadership/20160606.html

講義のポイント

  1. 人道支援の安全対策(Security)は、政府・企業等が行う一般の安全対策とは異なる。
  2. 団体運営責任者が負う注意義務とリスクの確実な管理によって、有効に機能することが、すでに実証済みである。
  3. それはフィールドを決定的に重視の上で管理される。
  4. リスクは軽減可能であるが、ゼロにはならず、残余リスクは常に存在する。
  5. 安全対策には、相応の資金と予算が必要である。

日本のNGOの主な学び

  1. InterActionの安全原則最低基準への各メンバーNGOの適合性は、それぞれが自己申告している。ただし、それに署名することで管理者としての法的責任が発生することにより、一定の歯止めとなっている。
  2. 人道支援における安全対策は、国際赤十字赤新月運動、NGO、国連機関を含む人道支援コミュニティ全体で協力して対処することで、実施可能となっている。
  3. リスク分析とそれに基づくリスク軽減措置によるモデルは、渡航時の安全等の低いリスクから、誘拐等の高いリスクまで、あらゆるリスクに適用される。
  4. 人道支援におけるセキュリティ・マネージャーに求められる資質は、通常のセキュリティ関係者に求められるものとは異なる。軍事的な背景をもつ人材が、必ずしも適合できるとは限らない。
  5. 米国のNGOが、専任のセキュリティ・マネージャーやオフィサーを置くようになったのも、安全原則最低基準を導入した15年ほど前からであり、それ以前は日本のNGOと同様兼任であった。
  6. 人道支援に携わるNGOが危険度の高い国で活動することに関する責任論について、米国や欧州の一般世論は、日本の状況とは大きく異なる。

このワークショップにおいて策定されたアクションプランに基づいて、コミットメントを表明したメンバー団体が、JaNISSとして現在まで活動を続けています。